人手不足の解消は業務の見直しから|採用に頼らない根本の解決策を解説

2026.07.14

人手不足は、多くの企業にとって深刻な経営課題となっています。少子高齢化による労働人口の減少やキャリアに対する価値観の変化、人材獲得競争の激化などにより、必要な人材を確保することは年々難しくなっています。

こうした状況に対して、採用活動の強化が有効な手段の一つであることは間違いありません。しかし一方で、業務負荷の偏りや属人化、非効率な業務プロセスといった課題が人手不足に拍車をかけているケースも少なくありません。

本記事では、人手不足の主な原因を整理したうえで、採用だけに頼らず、業務の可視化や業務改善によって人手不足を根本から解消し、組織そのものを強化する考え方について解説します。

日本企業で人手不足が深刻化する主な要因

少子高齢化による労働人口の減少

日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口(15歳〜64歳)の減少が続いていることから、多くの企業が慢性的な人材不足に直面しています。こうした状況は今後も続くと予想されています。

出典:総務省|令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少

採用競争の激化

労働人口が減少する一方で、多くの企業が採用を強化しているため、人材獲得競争は年々激しくなっています。

特にデジタル人材や専門職は需要が高く、やりがいや給与、福利厚生だけでなく、企業文化や働きやすさも比較される時代になっています。その結果、採用活動に多くのコストや時間をかけても、十分な成果を得られない企業が増えています。

キャリアに対する価値観の変化

近年は働き方やキャリアに対する価値観が多様化し、転職やキャリアチェンジを前提とした働き方が一般的になりつつあります。

そのため、採用できたとしても長期的な定着につながらず、人材の確保と育成を継続的に行わなければならない企業が増えています。

業務内容の複雑化・高度化

IT技術の進展や市場環境の変化により、業務に求められる知識やスキルは複雑化・高度化しています。その結果、必要なスキルを持つ人材の確保や、社内での育成が難しくなっている企業も増えています。

採用・外注だけに頼らない人手不足の解消方法

人手不足の対応策として、まず採用強化や外部リソースの活用が考えられます。必要な人材の確保や業務の外部委託は、人手不足解消に直結する有効な手段です。

一方で、採用市況を踏まえると、必要な人材を必要なタイミングで確保することは今や非常に難しく、また外部リソースを活用する場合でも、社内業務の切り分けや委託範囲が整理されていなければ、期待した効果を得るのは困難です。

そのため、人手不足の解消施策として、採用や外注といった「人員を補う」施策だけでなく、既存業務の進め方や分担を見直し、限られた人員で成果を出せる体制を整えることも重要です。ここでは、採用強化だけに頼らない対応策として検討したい主な解消方法を紹介します。

DX・ITツールの導入による自動化

RPAやワークフローシステムなどを導入し、定型業務を自動化する方法です。たとえば、手作業による転記や確認、申請・承認業務、Excelを用いた集計作業などを効率化することで、担当者の負担軽減だけでなく生産性向上も期待できます。ただし、ツール導入そのものを目的にするのではなく、自動化すべき業務を見極めたうえで導入することが重要です。

RPAに関しては「AIとRPAの違いとは?それぞれの特徴と効果的な活用方法」もご覧ください。

業務プロセスの見直し

業務の進め方やプロセスを見直し、無駄な工程を削減・効率化する方法です。残業時間の上限規制が導入された現在、同じ人数でもより多くの成果を生み出せる可能性があり、既存人員の負担軽減に加えて生産性を高める取り組みとして、業務改善への注目が高まっています。

業務プロセス改善に関して詳しくは「業務プロセス改善を成功に導くには?|改善手法と進め方のステップを徹底解説」、業務改善の基本的な考え方に関しては「ECRS(イクルス)とは?業務改善の4原則と実践ステップを事例付きで解説【オフィスワーク向け】」もご覧ください。

切り出した業務の外部アウトソーシング活用

業務委託、BPOサービスなどを活用し、一部業務を外部へ委託する方法です。重要なのは「とりあえず外に出す」ではなく、どの業務を外部に切り出せるかを整理するプロセスそのものです。業務を分解して委託可能なものを切り出すことで、社内に残すべきコア業務が明確になり、人員配置の最適化にもつながります。

職場環境の改善と人材育成への投資

働きやすい環境づくりや人材育成に投資する方法です。単に制度を整えるだけでなく、社員のデジタルリテラシー向上を支援するなど、個々の生産性を高める育成体制を築くことが、長期的な人材の定着と活躍の土台となります。

人手不足を深刻化させる3つの業務上の問題

採用の強化は、人手不足の有効な対応策となることは間違いありません。しかし一方で、業務負荷の偏りや属人化、非効率な業務プロセスが残ったままでは、新たに人材を採用しても同じ課題が繰り返される可能性があります。ここでは、採用だけでは改善が難しい、業務上の問題について解説します。

問題①業務負荷の偏り

同じ部署内でも、特定の担当者に業務が集中しているケースは少なくありません。この状態では人員を補充しても、新人が育つ前に既存社員の負荷が高まり、離職につながるといった負のスパイラルを招きかねません。

さらに、業務分担の偏りによって担当者ごとの成長機会に差が生じる場合もあります。その結果、属人化や業務負荷の偏りがさらに進み、人手不足を深刻化させる要因となることがあります。

問題②業務の属人化

特定の担当者しか業務が把握できていない属人化の状況では、業務効率も高まらず、周囲もフォローできません。特に、ベテラン社員の退職や急な欠勤がそのまま事業継続のリスク(BCP上の課題)に直結する状況は、多くの現場で共通する悩みです。

属人化の原因に関して詳しくは「情シス部門が属人化する原因と解消する5つの方法」もご覧ください。

問題③非効率な業務プロセスの残存

紙による申請、手作業での転記、重複入力など、非効率な業務も人手不足を深刻化させる要因の一つです。本来は削減できる作業に多くの工数が使われた結果、慢性的な残業や特定担当者への負荷集中につながっているケースも少なくありません。

人手不足解消の第一歩は業務の可視化と分析

人手不足の真の原因を特定するには、まず業務を可視化し、現状を正しく把握することが重要です。

ステップ①:業務量や業務負荷を把握する(現状把握)

人手不足の原因を特定するためには、まず感覚ではなく「数値」で実態を捉えることが重要です。どの業務にどれだけの工数が使われているかを定量化することで、真の課題が浮き彫りになります。

ステップ②:ボトルネック業務を特定する(課題抽出)

業務を分析すると、特定の工程や担当者がボトルネックになっているケースが見えてきます。業務を可視化することで改善効果の高いポイントを優先的に見直すことが可能になります。

ステップ③:自動化・効率化できる業務を洗い出す(改善策の検討)

業務量調査や業務分析を実施することで、自動化できる業務や削減可能な業務を発見できます。限られた人員をより付加価値の高い業務へ振り向けられるようになります。

さらに、この段階では単なる効率化にとどまらず、「誰がどの業務を担うか」をキャリアの観点から見直す機会としても活用できます。各人が成長できる業務に関与できるよう業務分担を再設計することで、長期的な組織強化につながります。

業務量調査に関して詳しくは「業務量調査とは?3つの方法と業務改善への活用ポイントを具体例付で解説」、業務分析に関して詳しくは「業務分析とは?目的から手法、効果的な進め方までを解説」もご覧ください。

業務可視化によって発見されやすい改善対象

上記のステップを通じて業務を可視化すると、特に管理部門ではExcelやAccessなどのEUC(End User Computing)に依存した非効率な業務が具体的に浮かび上がってきます。以下のような業務は、改善対象として特に発見されやすい代表例です。

部門 改善対象として発見されやすい業務
経理 Excelによる会計データ集計・転記作業
人事 勤怠データの集計・加工、人員別のデータ集計
総務 各種申請・データ管理、台帳管理
情報システム Excel・Accessによる運用管理

これらの業務は、現場主導で作成されたEUCに依存しているケースも多く、作成した本人しかメンテナンスできないブラックボックス状態になりがちです。

業務改善による人手不足解消の事例

こうした業務の可視化や業務改善に取り組むことで、限られた人員でも業務を回せる体制づくりにつながった企業もあります。ここでは、業務改善に成功した企業の事例を紹介します。

事例1:勤怠管理の自動化で業務負荷を軽減(日本海曳船株式会社)

・抱えていた課題

船員特有の勤務体系に対応するため、勤怠管理や収益管理をExcel中心で運用しており、データ集計や管理業務に多くの工数が発生していました。また、手作業による入力ミスや担当者への業務集中も課題となっていました。

・効果

勤怠管理システムと収益管理システムを構築し、データ連携を自動化したことで、日報作成や集計業務の負担を軽減。管理業務に費やしていた時間を削減し、業務効率の向上につながりました。

担当者への業務集中に対して単純な人員増強ではなく、業務プロセスの見直しとシステム化によって対応した事例です。詳しくは、「導入事例 日本海曳船株式会社様」をご覧ください。

事例2:会計データ集計業務を85%削減し、生産性向上を実現(三井不動産レジデンシャルサービス株式会社)

・抱えていた課題

会計データの集計業務を手作業で行っていたため、多くの時間と工数がかかり、担当者の負荷増大が課題となっていました。

・効果

EUCシステムを活用して会計データ集計を自動化したことで、従来7時間かかっていた作業が1時間で完了するようになり、業務時間の大幅な削減につながりました。定型作業の負担軽減により、担当者負荷の軽減と業務効率化を実現しました。

詳しくは、「導入事例 三井不動産レジデンシャルサービス株式会社様」をご覧ください。

採用だけに頼らない人手不足解消が組織を強くする

人手不足への対応として、採用強化は確かに重要ですが、それだけで人手不足の課題を解決できるとは限りません。実際には、業務負荷の偏りや属人化、非効率な業務プロセスが人手不足を誘発するケースも多く見られます。そのため、人員を増やす前に業務の実態を把握し、改善余地を見つけることが重要です。

特に管理部門では、ExcelやAccessを活用した業務が属人化しているケースも少なくありません。業務可視化や、EUCを活用した業務の見直しを進めることで、限られた人員でも高い生産性を実現し、人手不足を解消できる可能性があります。

また、業務負荷の偏りや属人化を解消することは、特定の担当者に依存しない業務体制づくりにもつながります。業務そのものの見直しは、人手不足への対応にとどまらず、組織全体の業務遂行力を高める取り組みともいえます。

「人手不足の原因が分からない」「業務改善の優先順位を明確にしたい」という場合は、まず現状業務の可視化から始めてみてはいかがでしょうか。

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