BPMの事例から学ぶ導入判断ガイド!成功・失敗の要因と自社への活かし方
2026.06.11

「BPMが業務改善に有効らしいと聞くが、自社にも当てはまるのだろうか」「導入しても成果が出なかったらどうしよう」と感じることはありませんか。BPM(ビジネスプロセスマネジメント)は多くの企業で成果を上げている改善手法ですが、導入すれば必ず成功するわけではありません。成功する企業と失敗する企業を分けるポイントを、事前に理解しておくことが重要です。
本コラムでは、BPMの成功事例4件と代表的な失敗パターンを紹介したうえで、「自社にBPMが向いているか」を判断するための基準を整理します。ぜひ、導入を検討する上での参考にしてください。
BPMとは?定義とBPRとの違い
まず、BPM(Business Process Management)の基本概念と、しばしば混同される「BPR(Business Process Reengineering)」との違いを整理します。両者は業務改善の代表的なアプローチですが、目的とアプローチに明確な違いがあります。
BPMの定義
BPM(Business Process Management)とは、業務プロセスを可視化・分析し、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善していくマネジメント手法です。「業務の流れ」そのものを管理対象として捉え、現場の日常業務の中で小さな改善を積み重ねていく点が特長です。
具体的には、次の4つのステップを循環させて運用します。
- モデリング:現状の業務プロセスを業務フロー図などで可視化する
- 実施:可視化したプロセスに沿って業務を遂行する
- 監視・測定:処理時間や品質などの指標をモニタリングする
- 評価・改善:結果を分析し、次のプロセス設計に反映する
このサイクルを継続的に回すことで、業務プロセスが「改善しっぱなし」「形骸化」にならず、組織の中に改善文化として定着します。
BPMとBPRの違い
BPMとよく対比されるのが、BPR(Business Process Reengineering) です。BPRは既存の業務プロセスをゼロベースで見直し、抜本的な変革を実施するアプローチです。BPMが日常的な改善活動として現場主導で進められるのに対し、BPRは経営層やプロジェクトチームが主導し、業務プロセスを根本から再構築する取り組みです。
両者の違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | BPM | BPR |
|---|---|---|
| アプローチ | 継続的な改善(PDCAの繰り返し) | 業務や組織の抜本的な再構築 |
| 改善の規模 | 小さな改善の積み上げ | 大規模な変革 |
| 主体 | 現場主導が多い | 経営層・プロジェクトチーム主導が多い |
| リスク | 比較的低い | 高い(失敗時の影響が大きい) |
| 適したケース | 既存プロセスの磨き込み・定着化 | 既存プロセスでは限界がある大規模変革 |
実際の業務改善では、両者を排他的に捉える必要はありません。後述する事例4のように、BPRで業務そのものを再構築したのち、BPMで継続的な改善サイクルを回していくアプローチも有効です。
業務プロセスの改善を網羅的に理解したい方は、業務プロセス改善を成功に導くには?|代表的な改善手法と進め方のステップを徹底解説もあわせてご覧ください。
BPM導入の成功事例4選
BPMで成果を上げている企業の事例を4件紹介します。事例1は業務プロセスの可視化と再設計による基本的なBPM活用、事例2・3はローコードツールなどのEUC(End User Computing)を活用した現場主導の改善、事例4はBPRで業務そのものを再構築したうえでBPMへ発展させた取り組みです。
事例1.業務プロセス可視化で作業時間を3分の1に短縮
とある大手通信会社では、建設工事の準備作業に1件あたり21時間を要しており、案件量の増加に対して処理が追いつかないという課題を抱えていました。複数部門にまたがる作業の重複や、担当者ごとに異なる進め方が、ボトルネックとして表面化していたためです。
そこで、まず現状の業務プロセスを徹底的に可視化し、部門間で重複している作業や、属人化していた判断ステップを洗い出しました。そのうえで業務フローを再設計し、判断基準の標準化と作業順序の入れ替えを段階的に進めた結果、1件あたりの準備作業時間を21時間から7時間へと約3分の1に短縮できました。
この事例は、改善着手前の徹底した現状プロセスの可視化と、優先度の高い工程からの段階的な改善が、大幅な時間短縮につながることを示しています。
出典: BPM活用事例!本当に効果的な活用法とは?(intra-mart)
出典: BPMとは?注目される理由やメリットなどを具体例とともに解説(NTT東日本)
事例2.EUC活用で開発コストを7割削減
富国生命保険相互会社の不動産部では、不動産管理業務のシステム対応を外部委託で進めていたため、操作上の不具合や利用頻度の低い帳票の改善が先送りになり、積み残し案件が増加していました。さらに、前任者が作成した複雑なシステムの引継ぎが困難で、業務の属人化やデータ管理の脆弱性も課題となっていました。
そこで、現場主導で取り組めるExcelやローコードツールなどのEUCを活用し、業務プロセスを可視化したうえで、現場側でアプリケーションを開発・運用できる体制へと転換しました。結果として、不動産部で蓄積していた100件以上の積み残し案件を、EUCを活用したプロセス改善により完全に解消し、システム開発に要するコストを従来比で約7割削減できました。
この事例は、高価な専用ツールに頼らずEUCでPDCAを回せる仕組みを整え、情報システム部門に依存せず現場が継続的に改善できる体制を作ることで、コスト削減と業務効率化を同時に実現できることを示しています。
属人化を解消しながら現場主導の改善を進める進め方については、属人化解消の具体的な進め方|リスク分析から効果的な対策までも参考になります。
出典: 業務効率化の成功事例3選|効率化を実現する具体的アプローチを解説(DBJデジタルソリューションズ)
事例3.EUC統合で作業時間30%短縮とヒューマンエラー防止
DBJ Europe Limited社では、欧州・中東・アフリカ地域での投融資やM&Aサービス提供において、取扱案件の増加に伴い事務処理量が拡大し、期日管理の徹底が難しくなることでヒューマンエラーのリスクが増大していました。複数の表計算ファイルや書類を担当者ごとに管理しており、業務プロセスの標準化が課題でした。
そこで、ExcelやローコードツールなどのEUCを用いて、案件管理・進捗管理・帳票出力を一元化したアプリケーションを構築し、業務フローと入力ルールを標準化しました。結果として、作業時間を約30%短縮できたうえ、入力チェック機能の組み込みによりヒューマンエラーを大幅に削減できました。
この事例は、業務の標準化と可視化を同時に進め、設計段階から現場担当者を巻き込むことで、作業時間の短縮とヒューマンエラー防止を同時に実現できることを示しています。
出典: 業務効率化の成功事例3選|効率化を実現する具体的アプローチを解説(DBJデジタルソリューションズ)
事例4.BPRとBPMの段階的アプローチで全社の業務改革を推進
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社では、年間約800万件の業務処理を抱えており、各部門がExcelで個別に管理していたために業務が属人化し、全社的な業務の見える化が進まないという課題がありました。部門ごとに異なるルールや書式が存在し、引き継ぎや異動のたびに業務効率が低下する状況が続いていたためです。
同社は次の2段階アプローチで改革を進めました。
- BPR(業務再構築)フェーズ:社内コンペ形式の業務改革コンテストを開催し、上期・下期の2期にわたり計19チームが業務の可視化と再設計案を提案しました。優秀案を実装に進める形で、業務そのものを根本から再構築しました。
- BPM(継続的な自動化)フェーズ:再構築した業務プロセスにローコードツールを導入し、現場主導でアプリを内製化しました。基幹システムからのデータ取得、申請業務、顧客情報共有、メール作成など、200を超えるアプリを内製で開発・運用しています。
成果として、年間数千時間規模の業務削減を見込んでいます。さらに、半年ごとの業務棚卸しと外部ベンダーによる継続的な伴走支援によって、改善活動を一過性で終わらせない体制を構築しています。
本事例は、BPRで業務そのものを再構築したうえでBPMとEUCを組み合わせることで、BPMだけでは対応が難しい大規模な業務改革も現実的に進められること、そして社内コンペという競争形式が全社的な改善機運の醸成に寄与することを示しています。
出典: Power Automate導入事例 - 伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社様(シーイーシー)
出典: 伊藤忠丸紅鉄鋼が進める「泥臭い業務改革」 200個のアプリを内製で開発(ITmedia)
BPM導入でよくある失敗パターン
成功事例の裏側には、つまずきやすいポイントが共通して存在します。ここでは、BPM導入でよくある3つの失敗パターンと、その対策を整理します。
目的が曖昧なまま進めてしまう
「BPMを導入すること」自体が目的化してしまい、何のために・どの業務を・どのように改善するかが不明確なまま進めるケースです。改善のゴールが共有されていないため、現場の協力が得られず、施策が形骸化していきます。
対策としては、経営目標との連動を最初に明文化することが重要です。例えば「コーポレート部門の処理リードタイムを半減させ、月次決算を3営業日短縮する」のように、改善後の状態をKPIで具体化することで、現場と経営層が同じゴールを見ながら推進できます。
業務改善が頓挫する典型的な要因については、業務改善が失敗する5つの原因を解説|問題点がわかるチェックリストつきでも詳しく解説しています。
一度に全プロセスを変えようとする
業務改善の機運が高まると、改善範囲を一気に広げたくなることがあります。しかし、複数部門・複数プロセスを同時に変えようとすると、現場が混乱し、結局どの改善も中途半端に終わってしまいます。
対策は、まず効果が見込める1〜2業務に絞って成功体験を作り、横展開していく段階的アプローチです。事例1の通信業も、優先度の高い工程から段階的に改善することで、大幅な時間短縮を実現しました。小さな成功事例が社内に共有されることで、改善活動への協力も得やすくなります。
改善が一度で終わり、継続しない
BPMの本質は「継続的な改善」にあります。初回の改善で成果が出た後、PDCAサイクルを回す仕組みが整っていないと、いつのまにか元のプロセスに戻ってしまうケースが少なくありません。
対策としては、定期的なモニタリングと見直しの場を業務に組み込むことが有効です。事例4の商社では「半年ごとの業務棚卸し」と「外部ベンダーによる伴走支援」を組み合わせ、継続改善の仕組みを業務サイクルに織り込んでいます。指標の見直し、レビュー会議、ナレッジ共有の場をあらかじめ設計しておくことが重要です。
自社にBPMは向いている?判断するための3つの基準
事例と失敗パターンを踏まえ、「自社でBPMを取り入れるべきか」を判断するための実践的な基準を3つ整理します。
基準1:BPMが効果を発揮しやすい業務の特徴
BPMの効果が出やすいのは、次のような業務です。
- 繰り返し発生する定型業務(経理処理、申請承認、顧客対応など)
- 複数の担当者・部門が関わるプロセス
- 属人化が進んでおり、担当者交代時に業務効率が落ちる業務
- 処理件数・処理時間などの指標で改善効果を測りやすい業務
逆に、創造性や個別判断が求められる非定型業務、発生頻度が極めて低い業務は、BPMの優先度が相対的に低くなります。
なお、BPMで対応が難しいケースもあります。例えば、業務プロセスそのものが時代遅れで小さな改善では追いつかない場合や、複数部門にまたがる構造的な問題が背景にある場合などです。こうしたケースでは、事例4のようにBPRで業務を根本から再構築したうえでBPMに移行するアプローチや、業務量調査・IT診断などの上位の業務分析アプローチへ発展させることも検討する価値があります。
基準2:BPM専用ツール(BPMS)が必要か、EUCで始められるか
BPMを実践するには、必ずしも高価な専用ツール(BPMS)が必要というわけではありません。事例2・3で示したように、ExcelやローコードツールなどのEUC(エンドユーザーコンピューティング)でも、BPMの考え方を実践することは十分に可能です。
両者の使い分けの目安は次のとおりです。
| 観点 | EUCで始める | BPMSが必要 |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 部門単位・特定業務 | 全社・複数部門横断 |
| 業務の特性 | 個別性が高い、変更頻度が高い | 標準化が進み、安定した業務 |
| 必要なガバナンス | 部門内で管理可能 | 全社的な内部統制が必要 |
| 投資規模 | 低コストで開始 | 相応の初期投資が必要 |
特にコーポレート部門の業務改善は、EUCから始めるのが現実的です。現場が自分たちで設計・改修できる柔軟性が、継続的な改善サイクルを回す原動力になるためです。
EUCの基礎や導入の進め方については、EUCとは?業務効率化を実現する仕組みと導入ステップを解説で詳しく解説しています。
基準3:継続改善の体制を整えられるか
BPMは「導入して終わり」ではなく、継続的にPDCAを回し続けることで真価を発揮します。導入を判断する前に、次の体制が組めるかを確認しましょう。
- プロセス改善を推進する責任者(または推進チーム)が決まっている
- 定期的なレビューの場(月次・四半期など)を業務カレンダーに組み込める
- 改善後の成果を測る指標(処理時間、件数、エラー率など)が定義できる
- 現場社員が改善提案を出しやすい雰囲気・仕組みがある
これらが整わない状態でBPMを始めても、初回の改善後に活動が停滞し、形骸化してしまうリスクがあります。社内のリソースだけで体制構築が難しい場合は、外部のコンサルタントによる伴走支援を組み合わせることも有効な選択肢です。
BPM導入を成功させるために押さえるべきポイント
ここまで紹介した4つの成功事例と失敗パターンから、BPMで成果を出している組織には次の共通点があります。
- 改善の目的とゴールを、経営目標と紐づけて明確に定義している
- いきなり全社展開せず、効果の見込める業務から段階的に着手している
- 現場主導で改善を回せる仕組み(EUC活用、推進体制、レビューの場)を整えている
- 一度の改善で終わらせず、定期的な棚卸しとレビューで継続性を担保している
- BPMだけで対応が難しい場合は、BPRや業務分析と組み合わせて発展させている
BPMで成果を出すには、現状把握、業務の標準化、継続的な見直しを地道に積み重ねること、そして自社の業務特性や課題に応じて段階的に進めることが重要です。
DBJデジタルでは、EUCアドバイザリーサービスを通じて、企業の業務プロセス改善・業務効率化を支援しています。業務プロセスの現状分析から改善施策の立案・実行まで、お客様の課題に合わせた段階的なサポートが可能です。
「BPMの導入を検討しているが、自社に合うか不安」「コーポレート部門の業務改善を進めたい」とお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。
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