シャドーITを適切に統制するには?リスク管理の仕組みづくりを解説

2026.01.16

近年、クラウドサービスやローコード/ノーコードツールの普及により、現場部門が独自にツールやアプリケーションを導入・開発するケースが増えています。こうした「情報システム部の管理外」で使用されるIT資産は「シャドーIT」と呼ばれ、企業全体のセキュリティやITガバナンスにおいて大きな課題となっています。しかし、すべてのシャドーITを除去することは現実的ではありません。重要なのは、リスクのあるツールを適切に把握・管理する仕組みをつくることです。本コラムでは、シャドーITとは何か、そのリスクと適切な統制の仕組みづくりについて解説します。

シャドーITとは?

シャドーITとは、情報システム部門の管理下にないIT資産やサービスの利用を指します。企業のITガバナンスが強化される一方で、現場では日々の業務効率化や業務改善ニーズから、システム部門を通さず独自に開発・導入されたツールやアプリケーションが増えています。代表例としては、個人契約のクラウドストレージ(例:DropboxやGoogle Drive)、無許可のチャットツール(例:LINE、Slackの個人アカウント)、自作のEUCやマクロ、Accessアプリなどが挙げられます。

EUCに関して詳しくは「EUCとは?業務効率化を実現する仕組みと導入ステップを解説」もご覧ください。

こうしたツールは、現場が業務を迅速に進めるうえで重宝する一方、情報システム部門からは見えない「ブラックボックス」となっており、全社的な視点での統制が及びにくい点が問題視されています。

シャドーITは「意図せず生まれたリスクをともなう資産」であり、利便性と統制のバランスをどう取るかが、多くの企業が直面している課題です。

シャドーITの統制不足が引き起こすリスク

シャドーITの放置や統制不足によって発生するリスクを解説します。

属人化による業務リスク

シャドーITは特定の個人の知識やスキルに依存して構築・運用されることが多く、その担当者が異動・退職した際に業務が滞る「属人化リスク」を抱えています。特に、マクロやAccessなどで構築された業務ツールは、ドキュメントが残されておらず、ブラックボックス化しやすい点も注意が必要です。

属人化の解消に関して詳しくは「属人化解消の具体的な進め方|リスク分析から効果的な対策まで」もご覧ください。

情報漏洩・サイバー攻撃のリスク

シャドーITで最も深刻なリスクは「情報漏洩」です。例えば、社員が個人で契約したクラウドサービスに業務データが保存されていた場合、公開範囲の設定ミスや設定漏れによって、第三者に情報が漏れる可能性があります。また、システム部門が関知しないツールは脆弱性が放置されがちで、サイバー攻撃の標的になりやすい傾向があります。

ライセンス違反や法令順守の問題

業務で使用するソフトウェアやサービスには、本来、企業契約に基づいたライセンス管理が必要です。これを無視して現場で個人アカウントを使用していると、ライセンス違反に発展する恐れがあります。結果として、監査対応の負荷増加やコンプライアンス違反など、企業ブランドの毀損にもつながりかねません。

業務効率の低下と資産の分散

部門ごとに異なるツールが導入されることで、社内標準との不整合やデータ連携の断絶が生じ、結果的に業務効率が低下する場合もあります。また、どのツールに何のデータが保管されているか分からなくなり、データガバナンスの低下やIT資産の全体最適が難しくなるという課題も浮上します。

IT統制に関して詳しくは「IT統制とは?の基本と実践ガイド|企業のデジタルリスクを効果的に管理する方法」もご覧ください。

シャドーITを洗い出すには?

こうしたリスクを避けるため、「どこに何があるのか」を正確に把握してシャドーITを洗い出す必要があります。可視化するための方法を紹介します。

既存台帳と突き合わせて棚卸し

ヒアリングやアンケートで収集した情報を、既存のIT資産管理台帳と照合することで、申告漏れや二重利用が発見できます。Excelやスプレッドシートなどで簡易的な台帳を用意し、可視化された情報を一元管理することで、IT資産の全体像を掴むことができます。

部門アンケートや現場ヒアリング

ツール名や使用目的、頻度、業務との関連性などを聞き出すことで、見えなかった利用実態が浮かび上がります。このとき、「禁止目的」ではなく「業務改善と統制の両立」と前向きなスタンスを伝えることで協力を得られます。

アクセスログ/端末ログなどITの可視化ツール活用

IT部門が保有するログ情報を活用すれば、現場の自己申告だけでは拾えない「潜在的なシャドーIT」の存在を明らかにできます。たとえば、PCやネットワークのアクセスログを解析し、未承認のクラウドサービスへの接続履歴を洗い出すといった方法があります。ログを活用する際は、プライバシーやコンプライアンスに配慮した運用ルールを設けましょう。

外部パートナーの活用

社内に潜むシャドーITの洗い出しは、人的リソースが限られる情報システム部門にとって大きな負担になりがちです。ITツールの可視化や課題の特定など、専門知識に長けたコンサルタントに依頼するのも有効です。

DBJデジタルのEUCアドバイザリーサービスやIT診断など、外部の専門家と連携することで、自社に最適な方針を設計できます。

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シャドーITの代表的な統制方法|排除・活用・管理の3つの考え方

シャドーITを洗い出した後、どのように対応すべきかを判断する必要があります。拙速に一律で禁止するのではなく、リスクレベルに応じて「排除・ルール化・管理対象化」を使い分けることが重要です。ここでは、適切な統制を行うための判断軸と具体的な対応方法を解説します。

リスクベースの管理方針を定める

すべてのITツールを完全に把握・管理することは、現実的には難しいです。そのため、統制の基本方針として「リスクレベルに応じた優先順位づけ」を行うことが重要です。

たとえば、顧客情報や機密情報を扱うツールは高リスクとして厳格に管理する一方、個人の業務効率化に留まるツールは一定の自由度を認めるといった、メリハリのある管理体制を構築します。リスク評価の基準(個人情報の有無などの取り扱いデータの種類、アクセス範囲、外部連携の有無など)を明確にし、管理対象を絞り込むことで、実効性のある統制が可能になります。

この方針を社内に明示することで、現場も「何が許され、何が許されないのか」を理解しやすくなり、自律的な判断を促すことができます。

発見したシャドーITへの3つの対応

リスク評価に基づいて、シャドーITへの対応を以下の3つに分類します。

排除:高リスクのツールは即時停止と代替を検討する

たとえば、無料チャットツールに顧客情報が保存・共有されているようなケースでは、重大な情報漏洩リスクがあるため、即時に利用停止を判断すべきです。こうしたツールは、業務への影響を最小限に抑えつつ、安全な代替手段への切り替えを迅速に行う必要があります。

活用:業務改善に貢献しているツールは代替やルール化で対応する

現場が主体的に導入したツールの中には、既存システムよりも実用的だったり、業務を大幅に効率化していたりするものも少なくありません。これらを無理に排除すると、現場の反発や業務の停滞を招く恐れがあります。代替ツールの提供、あるいは明確な利用ルール(例:保存場所、データ種別、利用対象者など)を定めることで、安全かつ継続的に活用可能な選択肢も検討しましょう。

管理:シャドーITを管理対象に移行する

根本的な方針として、シャドーITをなくすのではなく「把握・管理可能なIT資産に引き上げる」という考え方が有効です。使用部門と連携し、申請フローやモニタリング体制、ライフサイクル管理を整えることで、見えていなかったツールを正式な資産として取り込むことができます。

適切にシャドーITを統制する仕組みづくりのポイント

シャドーITへの対応を一度行っただけでは、時間の経過とともに再び新たなシャドーITが生まれる可能性があります。重要なのは、継続的に統制が機能する体制を構築することです。ここでは、持続可能な統制の仕組みをつくるための具体的な方法を解説します。

ガイドライン・ルールの整備

統制を機能させるには、明文化されたガイドラインとルールの整備が必要です。曖昧な基準では現場の判断にばらつきが生じ、結果的にシャドーITを生み出す温床となります。

具体的には、以下のような項目を盛り込んだガイドラインを策定します。

  • 利用可能なツールの定義:承認済みツールのリスト、推奨ツールの一覧
  • 申請・承認フロー:新規ツール導入時の申請手順、承認基準、所要期間
  • データ保存・共有のルール:扱えるデータの種類、保存場所、アクセス権限の設定方法
  • 禁止事項:個人アカウントでの業務利用、無許可の外部サービス連携など
  • 違反時の対応:発覚時の報告義務、是正措置、ペナルティ
  • リスク評価に応じた統制基準:情報資産の重要度(機密情報・社外秘・公開情報など)やツールのセキュリティリスクレベルに基づき、各ツールのリスクを評価。評価されたリスクレベルに応じた管理方法を定める。(例えば、リスクが低いツールは年1回のモニタリングのみとし、リスクが高いツールは半期ごとのモニタリングや変更時のシステム部門への申請を義務付けるなど)

ガイドラインは一度作って終わりではなく、業務環境の変化や新たなツールの登場に応じて定期的に見直すことが重要です。また、現場が実際に活用できるよう、わかりやすい言葉で記述し、社内ポータルなどで常に参照できる状態にしておきましょう。

ユーザー教育・啓発活動の実施

ルールを整備しただけでは、現場への浸透は期待できません。シャドーITのリスクと適切な利用方法を理解してもらえるよう、社員へ継続的に教育・啓発活動することが必要です。

効果的な教育施策としては、以下が挙げられます。

  • 定期的なセキュリティ研修:年に数回、全社員を対象とした研修を実施し、シャドーITのリスクや最新の脅威動向を共有する
  • 事例の共有:実際に発生したインシデント事例や、適切な対応で問題を未然に防いだ好事例を紹介する。なお、この場合において個人情報をマスクすることも重要です。
  • 相談窓口の設置と周知:「このツールを使いたいが問題ないか」といった気軽な相談ができる窓口を設け、現場が孤立しない環境をつくる
  • eラーニングやマイクロコンテンツの活用:短時間で学べる動画教材やクイズ形式のコンテンツを用意し、隙間時間での学習を促進する

教育は一方的に押しつけるのではなく、「なぜこのルールが必要なのか」を丁寧に説明し、納得感を醸成しましょう。そうすることで、現場からの協力を得られるようになります。

現場との信頼関係構築と支援体制

シャドーITが生まれる背景には、「IT部門への申請が面倒」「使用の承認に時間がかかる」「現場のニーズが理解されない」といった現場の不満があります。統制を強化するだけでなく、現場を支援する姿勢を示すことが重要です。

具体的には、以下のような取り組みが有効です。

  • 迅速な申請対応:申請から承認までのリードタイムを短縮し、現場の業務スピードを妨げない
  • 代替ツールの提案:「このツールは承認できない」と言うだけでなく、「この業務ではこのツールが代用できる」と提案する
  • 現場との定期対話:部門ごとにヒアリングの機会を設け、困りごとや改善要望を吸い上げる
  • IT部門の「支援窓口」化:統制部門としてだけでなく、業務改善のパートナーとしてのポジションを確立する

信頼関係が構築されれば、現場は自らシャドーITのリスクを認識し、事前相談や報告を自発的に行うようになります。「監視される」のではなく「支援される」という実感が、統制の実効性を高めるのです。

継続的な見直しとサイクルの確立

統制の仕組みは一度構築すれば終わりではなく、継続的に見直し、改善していくサイクルを回すことが重要です。

  • 定期的な棚卸し:年に1〜2回、IT資産の棚卸しを実施し、新たなシャドーITの有無を確認する
  • ガイドラインの更新:新しいツールやサービスの登場、法規制の変更に応じてルールを見直す
  • 効果測定と改善:統制施策の効果を測定し(例:インシデント件数、申請件数の推移など)、PDCAサイクルを回す

外部環境の変化や組織の成長に応じて柔軟に対応できる体制が、長期的な統制の成功につながります。

「把握できていない状態」をなくし、適切に統制することが最大の対策

シャドーIT対策の本質は、「禁止」ではなく「把握と管理」にあります。現場主導でITツールが導入されること自体は必ずしも悪ではなく、業務改善の源にもなり得ます。だからこそ、企業として統制の効いた運用ができるよう、「見える化」と「現場との対話」をベースにしたアプローチが必要です。

まずは社内の実態把握から始め、段階的にルールや支援体制を整えていくことが、持続可能なシャドーIT対策につながります。一方で、自社だけでの対応が難しいと感じた場合は、早い段階で外部の力を借りるのも有効です。たとえば、業務の棚卸しやリスクの洗い出し、改善策の立案、管理ルールの策定といったプロセスを、専門家の支援を受けながら進めることで、より確実かつスピーディな対応が可能になります。

DBJデジタルでは、業務分析からIT統制まで一貫してサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

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