経理・総務業務を効率化するには?|業務改善の3つのポイントや具体例を紹介
2025.07.29

経理・総務などのコーポレート部門は企業活動を支える重要な基盤です。しかし多くの企業では、これらの部門が日々の定型業務に追われ、非効率な処理や業務の属人化に悩まされています。さらにビジネス環境の変化や制度改正により、経理・総務部門の業務範囲と難易度は増大する一方、限られた人員でコーポレート業務の着実な遂行へのプレッシャーも高まっています。本コラムでは、経理・総務部門が抱える課題を整理し、業務改善のポイントと対策を紹介します。
経理・総務部門の共通課題
経理部門と総務部門はコーポレート業務として多くの共通課題を抱えています。まずは、これらの課題を理解することが業務改善の第一歩となります。
定型業務に追われ付加価値を生み出す業務に時間が割けない
請求書処理や勤怠管理などのルーティン業務に時間を取られ、数値分析や企画立案といった価値創造業務に十分なリソースを割けない状況が生じています。
制度改正や突発的な依頼への対応が頻発する
法改正や新制度への対応、経営陣や現場部門からの急な依頼や問い合わせなど、計画外の業務が頻繁に発生し、通常業務の効率低下が頻出しています。
業務の属人化により業務継続性の懸念が生じる
特定の担当者しか業務内容を把握していない場合、その担当者の不在時や退職時に業務継続が困難になるリスクが高まります。また、業務内容がブラックボックス化されてしまい、品質改善や業務効率化の糸口が掴みにくくなる原因ともなります。
非効率な業務フローが残置されたままとなってしまう
業務プロセスが可視化されておらず、各作業の所要時間や必要性の把握が難しいケースが多く見られます。そのため、無駄な作業や重複した業務が改善されず、業務効率の低下が問題となっています。
紙文化でペーパーレス化が進んでいない
企業によっては請求書や領収書、契約書など、現在でも紙ベースで管理しており、保管スペースの確保や検索の非効率さ、テレワーク時のアクセスが困難になるなどの問題を抱えております。
経理・総務部門共通の業務改善ポイント
経理・総務部門に共通する業務改善のポイントとして、以下の3つが挙げられます。
業務の見える化(可視化)で効率化できる業務を特定する
改善の第一歩として現状業務の見える化(可視化)が重要です。業務内容、担当者、所要時間、頻度などを明確にし、業務の関係性などを意識しながら全体像を把握します。この見える化によって重複作業や非効率なプロセスを特定でき、改善すべきポイントも明確になります。また、業務フローのマニュアル化によって属人化も防止でき、効率的な業務改善の基盤が築けます。
業務課題に関して詳しくは「業務課題とは?可視化の方法から解決手順までを解説」もご覧ください。
業務を分類し優先順位の高いものから自動化する
経理・総務部門は社内の様々な業務を一手に引き受けることが多く、担当者の負担が大きくなりがちです。そこで、業務改善によって見込める効果や現状の業務量などから優先順位をつけ、高順位かつ着手しやすい業務から自動化を検討することが重要です。例えば、毎日発生する社内の各種申請手続きをワークフローシステムで電子化し、承認プロセスを自動化することで、申請・承認作業の手間を大幅に削減できます。
突発的な対応と計画的な業務のバランスを取る
経理・総務部門は計画的に進めるべき業務を多く抱えていながら、日々の突発的な業務や依頼に対応することも求められています。そのため、無駄が多い作業は削減して、双方の業務に充てる時間と労力のバランスを都度判断することが肝要です。例えば、問い合わせ対応のFAQ化やチャットボットの導入で定型的な問い合わせへの対応を効率化し、それにより生じた余剰時間で計画業務や突発的業務をよりスピーディーに進めていくことができます。
経理部門での業務改善ポイント
経理部門では、特に以下の3つのポイントに焦点を当てた業務改善が効果的です。
決算業務の負担を軽減させる仕組みづくり
月次・年次などの決算作業は特定の時期に業務が集中します。そこで、例えば仕訳入力等の日次での会計業務を徹底し、経費精算や請求書処理を随時適切に行う仕組みを構築することで、決算時における作業負荷を軽減させることができます。
電子帳簿・インボイス対応をシステム化する
インボイス制度や改正電子帳簿保存法への対応は依然として課題となっています。請求書の電子受領や保存に対応したシステムを導入し、適格請求書の判定や保存を自動化することで、経理担当者の負担を大幅に軽減できます。また、システム導入はペーパーレス化にもつながり、書類検索の効率化、紙の請求書や領収書の保管スペースの削減、テレワーク環境でも書類アクセスが可能になるなどの効果も期待できます。紙から電子への移行によって書類の紛失リスク軽減や災害時のデータ保護も実現でき、業務継続性の向上にも寄与します。
データ入力・照合作業を自動化する
請求書や領収書の入力、銀行入出金との照合などに加え、数値管理などをExcelツール等を用いて手作業で行っている企業は未だ多く見られます。これらの作業はEUCやRPAの導入によって自動化し、作業時間の短縮が実現できます。例えば、請求書のデータを自動で読み取り会計システムに連携させる仕組みを構築することで、入力ミスの削減と作業効率化を同時に実現できます。
EUCに関して詳しくは「EUCとは?業務効率化を実現する仕組みと導入ステップを解説」もご覧ください。
総務部門での業務改善ポイント
総務部門は多岐にわたる業務を担当しているため、以下の3つのポイントを中心に業務改善を進めることが効果的です。
AIやITを駆使した法改正対応と情報管理の効率化
総務部門は労働法、会社法、民法など多岐にわたる法改正への対応が求められます。AI技術を活用した法改正情報の自動収集・分析システムを導入することで、関連する法改正を効率的にキャッチアップし、社内への影響度を迅速に判断できます。また、過去の対応履歴をデータベース化することで、類似案件への対応時間を大幅に短縮できます。
書式統一と管理データの一元化
総務部門が管理する各種申請書、契約書、規程類などの書式を統一し、クラウド上で一元管理することで、書類作成の効率化と品質向上を図ります。テンプレートの標準化により、担当者による品質のばらつきを防ぎ、承認者の確認時間も短縮できます。さらに、社員情報や取引先情報などの管理データを統合することで、重複入力の削減と情報の整合性確保が可能になります。
申請業務の電子化と期間管理の自動化
社内の各種申請業務(有給申請、経費申請、稟議書など)をワークフローシステムで完全電子化し、承認ルートの自動振り分けと進捗管理を実現します。また、契約期間や資格更新、定期点検などの期日管理業務については、自動アラート機能を活用することで、更新漏れや期限切れのリスクを大幅に軽減できます。これにより、総務担当者の記憶や手作業に依存していた管理業務を自動化し、業務の確実性と効率性を両立できます。
業務改善の進め方
経理・総務部門の業務改善を効果的に進めるためには、段階的にアプローチすることが必要です。
まず、現状の業務内容をすべて洗い出し「業務の棚卸し」を行い、業務量や業務内容を調査します。この際、各業務の所要時間や頻度、担当者を明確にし、全体像を把握しましょう。
次に、ECRSの原則(Eliminate:廃止、Combine:統合、Rearrange:順序変更、Simplify:簡素化)に基づき業務を分析します。不要な業務は廃止し、類似業務は統合、業務の順序を最適化し、複雑な業務は簡素化するという観点で見直します。
その後、効果の大きさと実施のしやすさで優先順位をつけ、「低hanging fruit(手の届きやすい果実)」から着手することで、早期に成果を実感できます。また、現場の声を取り入れるため、定期的な意見交換会やアンケートを実施しましょう。経理・総務部門は他部署との関わりも多いため、部門間連携を強化することで、全社的な業務効率の向上が期待できます。
業務の優先順位をつける方法は「属人化解消の具体的な進め方|リスク分析から効果的な対策まで」で解説しています。
また業務の棚卸や業務量調査に関して詳しくは以下もご覧ください。
業務改善の具体例と実践方法
具体的な業務改善の方法として、以下の5つのアプローチが効果的です。
標準化とマニュアル整備
業務の手順やルールを標準化し、誰でも同じレベルで業務を遂行できるようマニュアルを整備します。現在の業務フローの作業手順、判断基準、使用ツール、作業の目安時間を明文化します。経理部門では月次決算の手順書や仕訳ルール集、総務部門では契約書作成フローや労務手続きマニュアルなどを整備することで、担当者の経験に関係なく一定品質の業務遂行が可能になります。
ペーパーレス化の推進
紙の書類を電子化してクラウド上で管理することで、保管スペースの削減、検索性の向上などのメリットが得られます。請求書や契約書、稟議書などをPDF化してクラウドストレージに保存し、ファイル名や属性情報を統一することで検索性が向上します。電子印鑑やワークフローシステムの導入により、承認プロセスも完全電子化でき、決裁スピードも向上します。
EUCやRPAによる自動化
定型的な繰り返し業務はEUC(End User Computing)やRPAを活用して自動化します。長期的には大幅な工数削減とヒューマンエラーの防止につながります。
EUCの活用に関して詳しくは「EUCの活用で効率化できる業務とは?経理・営業・人事部門ごとの活用テクニックを解説」もご覧ください。
クラウドシステムの活用
経理・総務業務に特化したクラウドシステムを導入することで、業務の効率化と可視化を図ります。会計クラウドシステムでは銀行の入出金システムとの自動連携により仕訳入力が効率化され、人事労務クラウドシステムでは勤怠管理から給与計算まで一貫した処理が可能になります。
アウトソーシングの活用
専門性の高い業務や定型業務の一部を外部に委託することも効果的です。税務申告や社会保険手続きを専門家に委託することで法改正対応やミスリスクを軽減でき、給与計算や経費精算をBPO事業者に委託すれば繁忙期の業務負荷を平準化できます。
また、ITツールによる自動化やクラウド活用についても、外部のITベンダーに委託することで最適化した導入が可能です。必要に応じて外部に委託することで内製よりも高い効果を得られます。
この他、業務改善のアイデアについては以下もご覧ください。
経理・総務業務の改善で企業全体の生産性向上が実現する
経理・総務部門の業務改善は企業全体の生産性向上につながる重要な取り組みです。業務改善は一朝一夕で完成するものではなく、小さな改善を積み重ねていくことが大切です。まずは自社の課題を把握し、優先順位をつけて段階的に取り組みましょう。
DBJデジタルでは、経理・総務業務の改善コンサルティングから最適なツール選定まで、幅広くサポートしています。業務改善に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。