EUCの活用で効率化できる業務とは?経理・営業・人事部門ごとの活用テクニックを解説
2025.05.01

EUCを導入する企業が増える中、具体的な機能の選択や実装方法に悩む声が多く聞かれます。EUCは、データ抽出やレポート作成、分析ツールとの連携等、さまざまな業務効率化を実現できる一方で、適切な構築と運用が求められます。本コラムでは、EUCの具体的な活用テクニックや基幹システムの補完での活用事例、さらにはEUC活用時の注意点まで、実務担当者の方々に向けて詳しく解説します。
EUCとは?重要性と活用のメリット
EUC(End User Computing)とは、業務部門の社員が直接システムを利用して、必要なアプリケーションやデータベースを作成・運用する仕組みです。具体的には、Microsoft Officeやローコード・ノーコードツールといった身近なツールを活用して、企業のシステム部門に依存することなく、現場部門主導で業務効率化を実現できる点が特徴です。
主にはデータ分析や帳票作成、業務プロセスの自動化などの領域で活用が進んでおり、生産性向上の観点からも重要です。
EUCの基礎知識に関して詳しくは「EUCとは?業務効率化を実現する仕組みと導入ステップを解説」もご覧ください。
EUC活用によるメリット
EUCの活用で「業務スピードの大幅な向上」「コスト削減しながら業務品質を向上」といった効率化と品質向上が可能です。作業時間の削減で付加価値の高い業務に取り組むことができるため、例えば経理・財務部門では、売上データの分析が効率化・省力化され、タイムリーな経営戦略の立案が可能となります。
またEUCはシステム部門への依頼や開発を待つことなく現場のニーズに対応できるため、業務環境の変化や新たな要件にも、速やかに対応できることもメリットです。
部門別EUCの活用テクニック
各部門の業務特性に応じた、EUCの効果的な活用方法を紹介します。
経理部門での活用ポイントと具体例
経理部門では、日次・月次での仕訳処理、予実管理、決算業務などにおける作業効率化が重要な課題です。特に各種データの収集から分析までの一連の作業を、EUCを活用して自動化することで、正確性の向上と工数削減を実現できます。
• 主要な活用シーンとその効果
活用シーン | 活用方法と効果 |
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月次決算業務の効率化 | 複数システムから出力されたデータ統合を自動化することで、締め作業の時間を短縮。手作業によるミスも大幅に削減できます。 |
予実管理の自動化 | 予算データと実績データを自動で突合し、差異分析レポートを生成。週次・月次での経営報告資料作成が迅速化します。 |
部門別収支の集計 | 部署コードや勘定科目ごとにデータを自動抽出・集計し、部門別の収支状況を可視化。経営判断のスピードアップが可能です。 |
• 具体例:月次決算作業の工数削減(3日→半日)
ある企業では、月次決算時に5つの異なるシステムからデータを手作業で結合・集計していましたが、EUCを活用してシステム間のデータ結合を自動化しました。これにより月次決算作業が従来の3日間から半日へと大幅に短縮され、決算早期化と経営データの分析にリソースを配分することが可能になりました。
営業部門での活用ポイントと具体例
営業部門では、顧客データの分析や売上予測において、EUCが活用できます。従来のように手作業でExcelに入力していた商談情報や顧客との接点データを、各種切り口に自動加工することで、より精度の高い分析が可能になります。
• 主要な活用シーンとその効果
活用シーン | 活用方法と効果 |
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商談進捗の可視化 | 顧客別・担当者別の商談ステータスを自動集計し、案件の進捗状況をリアルタイムで把握。営業活動の優先順位付けが容易になります。 |
売上予測の精度向上 | 過去の受注確度と実績の相関を分析し、より正確な売上予測モデルを構築。受注確度に応じた売上予測で経営計画の精度が向上します。 |
顧客分析の自動化 | 取引履歴やクレーム情報、問い合わせ履歴などを統合分析し、優良顧客の特定や離反リスクの早期発見が可能に。カスタマーサクセスの質が向上します。 |
• 具体例:各種分析項目におけるデータ表示の自動化
ある企業では、CRMと基幹システムのデータをEUCで結合させ、顧客ごとの契約情報と実際の利用状況を統合分析しました。これにより、追加提案のタイミングや解約リスクの高い顧客を自動で特定できるようになり、営業活動の効率化と売上増加を実現しました。
人事部門での活用ポイントと具体例
人事部門では、複数拠点の勤怠管理や人件費分析、さらには人材配置の最適化などにEUCを活用できます。
• 主要な活用シーンとその効果
活用シーン | 活用方法と効果 |
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拠点別の人件費分析 | 勤怠システムと給与システムのデータの結合を自動化し、部門・拠点別の人件費分析を実現。人件費の適正化と予算策定の精度向上につながります。 |
部門別の要員計画策定 | 業務量予測と人員配置データを組み合わせ、最適な要員計画を策定。繁閑に応じた人材配置の最適化が可能になります。 |
人材配置シミュレーション | スキルマトリクスと業務要件を組み合わせ、最適な人材配置をシミュレーション。組織変更や新規プロジェクト立ち上げ時の人材配置を効率化できます。 |
36協定の管理と分析 | 残業時間データを自動集計し、36協定の遵守状況をモニタリング。労務リスクの早期発見と対策が可能になります |
• 具体例:複数拠点の勤怠データ統合による労働時間管理の効率化
全国に50拠点を持つ小売企業では、勤怠管理システムから出力されるデータをEUCで加工・分析し、労働時間の可視化と適正化に活用しました。残業時間のアラート機能を追加実装することで、36協定違反リスクを事前に検知し、労務コンプライアンスを強化しました。また、店舗別・時間帯別の人員配置データを分析することで、繫忙期と閑散期に応じた最適なシフト人数を出し、人件費を削減にも成功しました。
このようにEUCを活用することで、業務効率化や業務改善を行うことができます。EUC活用や最適化にお悩みの場合、専門家のサポートも検討してみてください。
DBJデジタルでは、現場の業務課題を解決するEUCコンサルティングを提供しています。社内ツールの診断から改修、システム化まで一貫サポートし、お客様に最適な改善策をご提案します。
EUCアドバイザリーサービス:https://www.dbj-digital.jp/service/consulting/euc.html
基幹システムの補完でも活用できるEUC
企業の基幹システムは、利用規模に関わらず機能追加や改修にコストと時間がかかりますが、EUCを補完として活用することで低コスト・短期間での業務改善が可能になります。特に手作業で多くの時間を要するデータ加工や帳票作成において、EUCは大きな効果を発揮します。以下では、基幹システムの補完で活用したEUCの具体的な活用事例と、それによって得られる業務効率化のメリットを解説します。
データ加工・変換の活用メリット
抽出したデータを目的に応じて加工・変換することで、経営決定に活用できる活きた情報へと変換できます。適切なデータ加工を効率的に行うことで、分析の質が大幅に向上します。
機能名 | 実装するメリット |
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データの集計機能 | 部門別、商品別、顧客別などさまざまな切り口での集計。基本統計処理から時系列分析まで、多角的な分析が可能に。 |
自動計算機能 | 売上総利益率や前年同月比など、業務上必要な指標を自動計算。統一された計算式で部門間の比較が正確に。 |
データ形式の変換機能 | システム間でのデータ連携時にフォーマットを自動変換。コード体系や日付形式の変換で、シームレスな連携を実現。 |
• 活用例
月次実績の自動集計、部門別データの統合、予実差異の自動計算
➤ 経理・財務部門での具体例
部門別損益の自動計算処理、本支店間取引の相殺処理、予算実績差異の詳細分析
レポーティングの活用のメリット
加工したデータを経営判断に活用しやすいレポート形式に出力することで、視覚的にわかりやすく、定期的な業績モニタリングを効率化できます。
機能名 | 実装するメリット |
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定型フォーマットの保存 | レポート形式をテンプレートとして保存・再利用。企業標準のレイアウトやスタイルを統一でき、報告品質が向上します。 |
定期レポートの自動生成 | 日次、週次、月次など定期的に必要なレポートを自動作成。スケジュール設定と自動配信で情報共有が迅速に。 |
グラフ・表の作成 | 数値データを視覚的に表現するグラフや表を自動生成。異常値の自動ハイライトで問題点を即座に把握できます。 |
• 活用例
月次業績レポート、部門別実績報告、予実管理資料
➤ 経理・財務部門での具体例
取締役会向け月次決算資料、部門責任者向け予実管理資料、日次・週次の資金繰り報告
EUCを活用する際の注意点
EUCを活用する際の注意点と具体的な運用方法を解説します。
システムパフォーマンスの最適化
大量データ処理時のシステム負荷を適切にコントロールし、安定した運用を実現するための対策が重要です。例えば、月次決算時の部門別データ抽出は、時間帯を分散して実行したり、データ量に応じて処理を分割したりすることで、システム全体への負荷を軽減できます。
データ出力・加工の効率化
日々の業務でEUC機能を最大限活用するには、処理手順の標準化が効果的です。よく使用するデータ抽出条件をテンプレート化したり、複数の加工手順をマクロで自動化したりすることで、作業効率を大幅に向上できます。特に月次での経営管理資料作成では、データ抽出から加工、レポート作成までの一連の作業を自動化することで、正確性の向上と工数削減を同時に実現できます。
適切な統制と管理体制の構築
EUCツールの普及により業務効率は向上する一方で、管理されていないEUCが部門ごとに乱立すると、データの整合性の欠如や重要情報の漏洩といったリスクが発生する恐れがあります。これを防ぐためには、EUC開発・運用のガイドラインを策定し、全社的な統制の仕組みを構築することが重要です。具体的には、EUC管理台帳での登録・管理、定期的な棚卸しの実施、重要度に応じた承認フローの設計などを行いましょう。
EUCの活用は、現場の効率化から経営層まで企業全体に変革をもたらす
EUCを効果的に活用することで、業務効率化だけでなく業務の質を高めることもできます。データ集計といった定型作業の自動化により、社員は分析や戦略立案といった付加価値の高い上流業務に注力できるようになります。さらに意思決定のスピードが向上することで、企業競争力の強化にもつながります。全社的な取り組みとして計画的に導入・運用を進めることで、組織全体の業務改善へも貢献するでしょう。
DBJデジタルでは、お客様の業種や規模に応じた最適なEUC導入や活用について、専門家による一貫したサポートを提供しています。業務改革を実現するEUCコンサルティングについて、ぜひお気軽にお問い合わせください。