電子請求書とは?メリット・デメリットや法的根拠を解説

更新日:2024年5月31日

テレワークの普及や法令改正により、請求書を含む書類の電子化が推進されています。これまで紙の書類でのやり取りに慣れ親しんでいる人にとっては、電子請求書に対して抵抗を覚えることもあるでしょう。しかし、電子請求書を導入すればあらゆる経理業務の効率化につながります。

そこで今回は、電子請求書の概要や普及状況、さらに導入のメリット・デメリット、システム選びのポイントを徹底的に解説します。社内のペーパーレス化を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

1. 電子請求書とは?普及状況や法的根拠も解説

電子請求書(請求書の電子化)とは、これまで紙の書類に印刷していた請求書を、インターネット通信を利用してやり取りできるようデータ化したもののことです。

従来では、取引先ごとに紙の請求書を郵送することが一般的でした。しかし、テレワークが進み、かつ法令改正により原本が必要となっていたデータの電子化が認められる近年、メールで電子請求書を添付・送信するケースも主流となりつつあります。また、2024年1月から施行された電子帳簿保存法改正では、電子データで受け取った請求書の印刷保管が出来なくなることもあり、制度対応と合わせて電子請求書の導入は今後増えることが予想できます。

下記は、株式会社ラクスが2023年12月に全国の経理担当者へ行った電子帳簿保存法への対応状況についての調査結果データです。

(出典:株式会社ラクス「電子帳簿保存法に関する意識調査」)

同データにも記載があるように、「請求書の電子化」に関する統計はありませんが、「電子帳簿保存法に則して運用している」と回答した企業は42.3%。2023年12月時点では半数以上が未対応という結果になり、現在はより多くの企業が電子請求書を導入していく傾向にあると言えるでしょう。

このように、電子化した請求書を保存するためには、ただ発行した書類データを通常通り扱うだけではなく、「電子帳簿保存法」や「e-文書法」といった法的要件を満たさなければなりません。ここからは、電子請求書導入に関する各法律の概要・目的・法的要件を紹介します。

1-1. 電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、請求書を含む国税関係の帳簿・書類を、一定条件を満たした上で電子化し、保存することを認める法律です。経理業務を軽減するために制定されました。

最初に施行されたのは1998年ですが、技術の発展に伴い、時代に適した対応ができるよう幾度となく法令改正が行われました。2022年1月には、電子請求書にも大きく関係する大幅な法令改正・規制緩和が行われました。(2023年12月迄猶予期間)

これまでの電子帳簿保存法では、電子データで受け取った請求書などの書類の紙保存が認められていたことが特徴です。また、国税関係の帳簿・書類を電子データとして保存する際は、原則として3か月前までに税務署長へ申請し、承認を受ける必要がありました。

しかし、2024年1月の猶予期間の終了に伴い事前承認制度が廃止され、電子取引の電子データが完全義務化されました。つまり、電子取引に該当するデータのやり取りを行っている企業はすべて義務化の対象となり、電子請求書を出力保存することが原則不可能となります。

さらに、電子請求書を保存する際は、電子請求書にタイムスタンプを付与し、検索機能を確保した状態でなければなりません。電子データ保存における事前承認制度が廃止されたことから、税務上の不備が認められた場合のペナルティ(罰則)も強化されたため、適切に保存できるよう注意してください。

1-2. 電子帳簿保存法の対象書類

電子帳簿保存法の対象書類は、主に国税関係帳簿書類に関する書類と電子取引に関する書類の2つです。国税関係帳簿書類とは、税法によって保存が義務付けられている書類を指します。主な対象書類2つの具体的な書類は、それぞれ下記の通りです。

電子請求書を保存するには、e-文書法により下記の要件を満たさなければなりません。

<国税関係帳簿書類に関する書類>

・決算書類(棚卸表・貸借対照表・損益計算書など)

・売掛金台帳

・総勘定元帳

・現金出納帳

・仕訳帳 など

<電子取引に関する書類>

・取引を電子データで行った場合の電子取引データ情報(契約書・発注書・領収書など)

・電子マネー決済・電子契約をした場合の取引明細情報

さらにこれらの書類データは、電子帳簿保存法により「電子帳簿保存のみできる書類」と「スキャナ保存のできる書類」に分けられます。下記の表に、それぞれの対象書類をまとめました。

電子帳簿保存のみできる書類 スキャナ保存のできる書類
・決算書類
・一貫してパソコンで作成できる帳簿
→総勘定元帳・仕訳帳など
・モノや資金の流れに直結する重要書類
→契約書・納品書・請求書・領収書など
・モノや資金の流れに直結しない一般書類
→注文書・見積書など

上記のように、対象書類の中でも取り扱いが異なる点に注意してください。

2. 電子請求書を採用するメリット・デメリット

電子請求書を採用することには、あらゆるメリットが存在します。しかし、反対にデメリットもあるため、実際に導入する際はメリット・デメリットの両者を考慮する必要があるでしょう。デメリットを把握しておくことで、スムーズな導入と導入後のトラブル回避につながります。

ここからは、電子請求書を採用するメリット・デメリットを紹介します。

2-1. 【メリット1】業務を効率化できる

電子請求書の採用で最も強く感じられるメリットが、業務の効率化です。

請求書を紙で発行する際は、封筒と紙を用意した上で、取引内容や内訳、請求金額を記載した請求書を作成する必要があります。その後、作成した請求書データを紙に印刷し、印刷した請求書を三つ折りにして封入しなければなりません。またその封筒は最終的に切手を貼ってポスト投函、または郵便局に持ち込む必要があります。

しかし、請求書を電子化すれば、これらの手間がすべて省けます。
また、例えば紙媒体での書類保管の場合、必要なときに適切な書類を探すことは決して容易ではありません。似たような書類を手に取り、目で確認して見分けるという作業はかなりの時間を要するでしょう。しかし、情報検索機能が備わったデジタルデバイス内に情報を保存しておくことにより検索性が向上し、膨大なデータ情報から必要なデータを横断的に検索することが可能となります。そのため、必要な書類を取り出すという作業に手間をかける必要がなくなります。
業務を大幅に効率化できれば、結果として他の業務に集中することもできるでしょう。

2-2. 【メリット2】コストを削減できる

紙の請求書の発行業務では、請求書を印刷する紙代や封筒代、切手代が発生します。また、事務作業を行う経理担当者の人件費もかさむでしょう。

しかし、請求書を電子化すれば紙での請求書発行処理コストが削減でき、業務にかかる人件費も大幅に軽減させることが可能です。

■(参考) Web帳票発行システム「楽楽明細」の導入による、請求書発行業務の経費削減例(株式会社ラクス)

(Web帳票発行システム「楽楽明細」)

2-3. 【メリット3】テレワークの推進につながる

紙の請求書を発行するとなれば、テレワークをしていても場合によっては押印・承認のために出社しなければならないケースもあります。このようなケースは、テレワークの推進を妨げる可能性があるでしょう。

しかし、請求書を電子化すれば担当者がわざわざ出社する必要がなくなり、テレワークの推進に大きくつながります。

2-4. 【デメリット1】取引先への対応が必要となる

取引先の企業によっては、請求書の電子化に抵抗を持たれている場合もあります。相手先の企業と契約を交わす際は、事前に電子請求書でのやり取りの承認を得るなど、双方の合意が必要であることがデメリットと言えるでしょう。さらにこのとき、「なぜ電子請求書でなければならないのか」「法的に有効なのか」などの問い合わせが増加する可能性がある点も懸念点と言えます。

また、取引先が電子請求書に消極的な場合(紙での請求書がほしいと言われた場合)は、改めて下記の順番で一度依頼をした上で、必要に応じて個別対応するようにしましょう。

1.(電子請求書は)法的に問題は無いので、再度受入可能かお願いする。
2.取引先側で受け取った電子請求書を印刷して保管して頂く。(法的には問題ない)
3.送付側で電子請求書を印刷して郵送する。
(角印、押印等は実際の印鑑によるものではない為、法的には問題ない)
4.業務手順上、紙発行対応ができないためお断りする。
5.(営業上等の理由によりお断りできない場合)
角印、押印等について実際の印鑑の押印がなされた紙の請求書を作成して、取引先に郵送する。

2-5. 【デメリット2】セキュリティ上の懸念がある

電子請求書を導入するにあたって、特定のツールを使用したり、社内共有のフォルダに入れたりすることも多々あるでしょう。

多くのツールでは万全なセキュリティ対策が行われているとは言え、第三者にデータを抜き取られるなど、情報漏えいのリスクは決してゼロではありません。

また、社内共有のフォルダに入れている場合は第三者による改ざんのリスクがあることにも気を付けましょう。タイムスタンプを付与したり、社内の特定の人物しか扱えないフォルダに入れたりするなど、従来の紙で行っていた時と同様のセキュリティ対策が必要です。

3. 電子請求書の発行システムを選ぶ3つのポイント

現在では、多くの企業・ベンダーからWeb請求書システム・ソフトが出されています。それぞれ特徴・違いがあるため、自社に適した電子請求書サービスを選びましょう。下記は、電子請求書の発行システムを選ぶ代表的な3つのポイントです。

〇どの業務をシステムでカバーできるか

電子請求書発行システムの中には、請求書作成・送付作業だけでなく、督促など請求後のあらゆる経理業務を行えるものや、請求書の発行に必要となる申請・承認のワークフロー機能が搭載されたものなどがあります。まずは、システムにどのような機能を欲しているのかを把握したうえで、さまざまな電子請求書発行システムを比較・検討しましょう。

〇他のシステムと連携できるか

請求書の作成や、入金情報の管理業務を効率化するためには、他システム(CRMなど)との連携も重要です。他システムとの連携方法には主に、CSVファイルなどを用いて担当者が必要データを抽出したうえで電子請求書発行システムにインポートする方法と、APIを用いてシステム同士で直接連携する方法がありますが、業務効率化を目的に連携させるのであれば、システム同士で直接連携できる電子請求書発行システムがおすすめです。

〇サポートは充実しているか

電子請求書発行システムのベンダーによるサポートの充実度も、選ぶポイントとして重要となります。特に見るべきポイントは、365日対応可能であるかどうかです。土日祝日にも稼働する企業の場合、万が一システムに不具合やエラーが生じたときにすぐ問い合わせしてトラブルシューティングを行うことは欠かせません。また、サポート対象の範囲もチェックしておくようにしましょう。

まとめ

電子請求書とは、インターネット通信を利用してやり取りできるようデータ化した請求書のことです。これまで請求書は紙でやり取りする企業が多くいましたが、主にペーパーレス化の推進や電子帳簿保存法の改正により、今後は電子請求書の作成・保存が主流となっていくでしょう。

電子請求書の導入には、業務効率化・コスト削減・働き方の多様化への対応などあらゆる面でメリットがある一方で、取引先への特別な対応が必要となる・情報漏えいや改ざんのリスクが少なからずあるなどの懸念点もあります。

デメリットを払拭するためには、自社に適した請求書発行システムの選定が重要です。改正された電子帳簿保存法に対応するシステム、ソフトウェアは様々なベンダー、ソフトウェア開発会社側で続々と新機能の追加がされ、販売を開始しております。ここまでの内容を参考に、ぜひ適切な請求書発行システムを選んでみてはいかがでしょうか。

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