第3話

新人に任せられる業務の内容が知りたいです

Story #03

再び会社説明会での新卒からの質問に悩む綿谷。「新人SEは、一体どこまでの範囲の仕事を任せられるのか?」すると三者三様のパターンが出てきて…

佐藤さん! ここにいたんですね! しかもまた綿谷さんとコーヒー飲んで遊んでるし!

別に遊んでるわけじゃないよ。また綿谷からこの前の件でいろいろ質問されて仕方なくさ。

よく言うよ。コーヒーおごるって言ったら二つ返事だったじゃないか。(笑)

まあまあ。うちの自販機は会社の補助が出てるんだし、細かいこと言うなよ。

そうですよ、会社の補助あるんですから! …じゃなくて、私も会話に入れてくださいよ! この前も聞きたかったんですけど、会社説明会では他にどんな質問があがったんですか?

ちょうど良かった。綾香さんも入ってきてくれて。 他にあがった質問で印象的だったのは「新人に任せられる業務の内容が知りたい」だったね。

なるほど。確かに私も入社するまでは、どんな業務をやるんだろ? って気になっていました。

そうだね。就活中の学生は結構気にしていると思うよ。そこはまず綾香さんの新人時代の経験を聞くのがいいんじゃないかな?

まずはテストから

う~ん。そうですね。新人としてプロジェクトに配属されたら、まずはプログラムのテストですかね。テストの実施準備、あとはテストデータを作ったりとか。

俺もそうだったな。懐かしい。

自分もそうだった。まずはテストから携わることが多いのかな。ちなみに、テストするプログラムは、プロジェクトメンバーが作ったプログラムだよね?

はい。最初はテストのことを雑務かなと思ってたんですけど、実際にプログラミングする時は、結局テストすることをイメージしてやらないといけないので、最初にテストに携わって、テストのイメージとか作法を身に着けておくことは結構大切でしたね。後から気付いたことですが。

そうだね。プロジェクトにもよるけど、テストファーストといって、先にテストケースとテストの結果を用意しておいて、その後にプログラミングすることも一般的になりつつあるからね。自分も後から気付いた。

テストに慣れてきたところで、ようやく簡単なプログラミングをやらせてもらえました。

なるほど。綾香さんはどんなプログラミングを担当したの?

本人のスキルレベルにもよるんですが、私の場合は出力されるデータの色をちょっと変えてみようとか、このデータを画面に表示させてみようとか、ほんと簡単な作業から入りましたね。

さすがにいきなり難しいプログラミングは厳しいから、最初は簡単なところを切り出してタスクを渡していったな。

はい。そして、佐藤さんが一緒にプログラミングしながら習熟度を見て、ある程度レベルが上がったところで1機能作ってみてと任せてくれました。でも、できる新人だと、いきなり1機能作るところから任されるみたいですけどね。

そうだな、テストや簡単なプログラム修正をしながら、仕事のやり方や作法、チームでの仕事の意義に慣れていくという感じだな。

はい。システム開発は一人ではなくて、チームで作るので、できたプログラムの品質をチームとしてどのように保証して、それを誰が承認するかというプロセスを覚えることはとても大切でしたね。

佐藤や綾香さんの2年目はどんな感じだった? その辺りから仕事に変化があったりするの?

2年目は上流工程にガンガン突っ込む

2年目かぁ… そういえば綾香さんは年明けから大変だったよね。

そうなんです! 2年目になってくると、うちの部署はドカーンとレベルが上がる感じでした! というのも、いきなり設計書を書くことになったんですよ! そして、上流工程にガンガン突っ込まれていきます。

「ドカーン」とか「ガンガン」って…そんなにレベルが上がったの?

実際、業務にお客様が密接に絡んできます。お客様との打合せに行くとか、議事録を書くとか。あとは、お客様に提示する資料を作成するとか。顧客目線がイッキに入ってきます。

あれ? 自分の場合は1年目から議事録を書いてたよ?

そうなんですか? 私の場合は書かなかったですね。

そうだな。うちの部署は、今では1年目だと顧客との打合せに行かないな。ただ、俺の時は、1年目からいきなり顧客との打合せに出ることになって、初対面の名刺交換で手が震えたよ。議事録担当で全く発言できなかったけど。

そういえば佐藤はプロジェクト配属後、いきなりプロジェクトマネージャーと一緒に、マネジメント系の仕事をしていたね。

マネジメント系ではなく補佐だけどな。新人はプログラミングから入ると思っていたから当時は面食らったし、「このままじゃ同期に置いていかれてしまう」って真剣に悩んだな。ただ、今ではとても良い経験をさせてもらったと思っているけどな。

へぇー! 佐藤もそんなことを思ってた時期があったんだな。まぁ佐藤の話も聞きたいところだけど、一旦綾香さんに話を戻そう。

はい。佐藤さんの時はともかく、私が1年目のときは顧客との打合せには行きませんでしたね。

そこは部署によって違うんだね。さて、2年目から設計書を書くってことだけど、綾香さんはいきなり「やって」って言われて書けた?

設計はプログラミングと思考が違う

それはメチャメチャ時間をかけましたよ。佐藤さんがやるよりも2倍3倍の時間はかかりました。ただ、そこを見越して、多めにその時間を与えてくれましたけど。

そうだよね。テストと実装と段階を踏んでやってきたから、設計書のイメージはついているだろうけど、時間はかかるよね。

はい。そうですね。1年目から設計書は見てイメージは持っていて、設計書の修正から入ったんですが、実際自分が書くとなると、考える量がイッキに増えるんですよ。

そうだな。すごい苦労してたもんな。

そうなんです。設計書を見てプログラミングをするのと、設計書が無い所からゼロベースで設計書を作るのとでガラッと思考が変わるからですね。

確かに。プログラミングとは違う頭を使う感じだよね。

はい。その思考が変わる難しさを凄く感じました。「こんな書き方をしたら他の人は作れないよね」とか、「もうちょっとここまで落とし込んで書かないと、こういうバグを生み出すよね」とか、そこまで踏み込んで考えて設計しないといけなくて、とても苦労しました。

あと、佐藤さんがすごくうるさくて。(笑)

佐藤、先輩として何か補足ある?

そうだな、うるさいのは仕方ないとして……(笑)

まとめるとうちの1年目は対外業務より内部で完結する業務で仕事の基礎を叩き込むってとこかな。2年目になって設計書や顧客対応とか、満を持して実戦に出てもらうって感じだな。

最近のトレンドは、早く顧客の前に立たせる

ちなみにうちの部署の話をすると、新人はテストからじゃなくて、プログラミングから始めてもらうよ。不具合改修とか、新規機能を作るのが最初の仕事。

へー、そうなんですか。新機能の作成を新人に依頼するにしても、それをそのまま放置したりとかはしないんですよね? ちゃんと先輩が確認してくれるんですか?

もちろん先輩が責任を持つよ。あと、お客様の前に立つのは1年目からあるよ。議事録は1年目からやっているね。

綿谷の部署は、そういうところはゴリゴリやらせるよな。

最近は、2年目で顧客に説明する所まで任せる感じ。もっと早く顧客説明まで任せたいという声も挙がっているよ。

2年目で顧客説明って、それでも十分早いと思うけどな。

部署によって1年目の教育方針が違うんだよね。各部署の方針次第という感じかな。

でもさ、まずは本人に希望も聞くよな。開発をバリバリやりたければ開発寄りのことをお願いするし、顧客の前に出たいといえばそのとおりにするし。やはり本人の希望次第というのはあるな。

そ、そうですよね! 本人の希望は重要ですもんね! (綿谷さんの部署に配属されなくて良かった……)

キャラクター紹介

綿谷

7年目の男性。視野が広く、周囲と調和して仕事を進めるタイプの文系出身SE。仕事の合間に会社でのマッサージ施術を抜け目なく受けている。

佐藤

7年目の男性。大学でロボット工学を専攻していた理系出身SE。高い技術力を誇るも、若手時代は同期と同じく苦労を重ねてきた。

綾香

3年目の女性で佐藤直属の後輩。いつも笑顔で元気いっぱいな文系出身SE。入社直後の研修で木っ端みじんにされた経験を持つ。

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