第2話
プログラミングの知識をどこまで求められるのか?
Story #02
綿谷が文系の学生から受けた「プログラミングの知識をどこまで求められるのか?」という質問について、綾香は自身の入社時の経験を振り返る
あー…。すごく気持ちよかった…。


あーっ! 綿谷さんマッサージ受けましたね! 私も肩凝ってて予約したいのにー!
別にいいじゃん。大役が終わったご褒美ってことで。


確かにそうですね! 綿谷さんのスピーチ、評判よかったみたいですよ。
そうなの? それはよかった。正直、結構緊張してたんだよね。それにスピーチの後の質問タイムでいまいちうまく答えられなかった質問があって、ちょっと心配なんだよね。


へー、どんな質問ですか?
「プログラミングの知識をどこまで求められるのか?」って質問。

文系の学生からの質問だったんだけど、自分も文系でさ、「知識なんて、なくてもなんとかなるよ」的な返答をしてしまって。今考えるとそれで本当に良かったのか? ってちょっと自信なくてさ。


確かに。俺は理系だったけど、どのレベルまで求められるのか? は入社までは不安だったな。
驚いた。いきなり出てくるなよ佐藤。


私も文系でしたけどあまり気にしてませんでしたよ。新人研修もあるし、なんとかなるでしょ! って思ってました。

それはそれで凄いな。
木っ端みじんにやられた
綾香さんは不安が無かったみたいだけど、学生時代にプログラミングの経験があったの?


簡単なExcelマクロを組んだ経験はありました。ただ、ガッツリとプログラミングしたことは無かったです。

でも、最終面接で副社長から直接「プログラミングやったことなくても、しっかり研修するから大丈夫だよ」と言ってもらえたので、入社当初は不安は無かったです。
そうだったんだ! じゃあ、新人研修でプログラミングにガッツリ触れることになったんだね。


ま、まぁ…。そしたら新人研修で木っ端みじんにやられてしまって。
木っ端みじん……って。


そういえば、あの世代の研修からカリキュラムが増えたもんな。

そうみたいですね。実際、あの時は「業界マチガエタカモー!」って、毎日びびりながら過ごしてました。

研修でもプログラミングの勉強はしてたんですけど、業務に通用するレベルまで行ってないような気がして…配属されたときは不安でいっぱいでした…。
そ…そうだったんだ。それは初耳だったなぁ。で、配属後はどうだったの?


佐藤大先生ガズット面倒見テクレタオカゲデ、ナントカナリマシタ。

いきなりどうした。

不安を残した状態で研修から帰ってきたので、「こいつ何しに研修行ったの?」って佐藤さんは思ってたんじゃなかったのかなぁって……。
最初はみんなそんなもんだから気にしなくて良かったのに。


そうなんです。だから別に佐藤先輩に感謝することなかったですけどね。

切り替え早すぎだろ。

プログラミングの知識は無くてもなんとかなる
研修内容を100%理解してたわけじゃなかったんだ。そこからどうやって巻き返したの?


それは、本当に周りに恵まれたからですね。プロジェクトに配属されてから、先輩方には丁寧に丁寧に教えて頂きました。

確かに、色々と教えたよな。

それこそ小さいIF文を書くところから、ハードウェアのことまで丁寧に教えてもらって助かりました。実践でもプログラミングを習得できる機会も多かったですし。
実践で覚えていくのはどこのプロジェクトでも変わらないね。しかしいい先輩たちだね。


でも今まで、私の後に入ってきた新卒を見ても、私ほどプログラミングができなかった人って、多分いなかったんじゃないかなぁ~、って思います。
それはどうして?


だってみんな、研修だけに留まらず自分できちんと勉強しているじゃないですか。今思うと、必要なのは知識よりも自分で勉強するという姿勢なのかなと。

いきなり深いこと言うなぁ。

それと、配属後に感じたことですが、ぶっちゃけSEの仕事って、プログラミングが必要なところは限られていると思うんですね。。

だから今までの考えをまとめると、入社前にプログラミングをしっかりと勉強すべきか? というと、そうじゃないなって言うのが私の思いです。
なるほど。綾香さんとしては、プログラミングの知識は入社前に無かったとしても何とかなるよ、ってことでいいのかな。


そうですね。何とかなります。どのみち周りの方々に迷惑をかけるのは間違いないですから(笑)
堂々と言うことじゃないだろ。


でも確かにそれは誰だってそうだ。実際、綾香さんから色々ともらった質問の中で、俺の知識だけでは答えられないことも結構あったしな。
え! そうだったの? それってどうしてたの?


それは、「ちょっと待っとけ」と綾香さんを待たせて、その間にこっそりと上司に聞きに行っていたんだよ。そして、上司から聞いてきた事を、さも自分が知っていることのように、綾香さんに教えることを毎日やっていた。

そうだったんです。研修が終わった後に教えてくれました。
佐藤、こっそりと聞いていたのはなんで?


それは、後輩に「佐藤さんすげぇ!」ってガツンと示したかったからだ!
……それはある意味すごいね。


完全二騙サレテマシタ。

真面目に答えると、研修期間中は、綾香さんとフロアが違ったんだよ。だから、綾香さんが俺の所に質問にきたら「ああ、なるほどなるほど」とさも自信ありげに聞いて、「ちょっとここまで考えておいて」って綾香さんを帰す。

そして、「課長~、これなんすけど」と聞きに行って、分かったら綾香さんを呼び戻して解説するという【めんどくさい】ことをやっていたんだよ。
確かに、めんどくさいことやってるね。


たださ、それだともう、答えるスピードが間に合わなくなったんだよ。だからもう諦めて「よし! 一緒に聞きに行くぞ」っていう風にやっていたな。

懐かしいですね! そんなこともありましたね。
後輩にいいとこ見せるのも大変だね(笑)。話を変えて、佐藤としてプログラミング知識は、入社前にどの程度必要だと思う? 理系の視点で聞かせてよ。


SEには向上心と好奇心が必要

プログラミングの知識は、別に事前に無くてもいいよ。プログラミングの知識は、あったらあったで有利なことは間違いない。ただし、綾香さんが言ったように、プログラミングってSEの仕事の中では一部だしね。
確かに。SEってプログラミングだけじゃないよね。


ただ、プログラミングはSEとしては絶対避けては通れない部分というのもあるな。
そう。だから佐藤は必要だって言うと思ってた。


最初の研修はプログラミングとかの研修になるから、そこですごく躓くか、学生時代に経験があるから実務では少しやり方は違うけどまあこんなものか、と超えられるのか、最初の違いはあると思う。

ただ、プログラミングの知識は入社前に必須ではないのは変わらないかな。
確かに、事前知識のある無しで大きな差がつくことはないよね。


うん、もし最初に差がついたとしても何年か経ったらその差はほとんど無くなる。もちろん、それは本人の頑張り次第で、分からないところをそのままにするとか、覚える気がはなからないというのは論外だけどな。
まとめると、プログラミングの知識は入社時点で無くても構わなくて、更に研修で躓いたとしても大丈夫。向上心と好奇心があれば良いってことだね。


あっ! それは正に私のことですね! ということは、あと何年か経てば私でも佐藤さんに追いつくってことですね(笑)

うるさいやつだな(苦笑)

それと、もしプログラミングの知識が無いとしたら、プログラミングすることが全くない仕事に就くしかないかも。

例えばどんな仕事ですか?

う~ん。設計だけに特化するとかじゃないかな。新人の仕事として、うちの会社にその仕事があるのかは知らないけどな。ただ、SEを目指すのであれば、プログラミングの勉強は避けては通れないな。元々プログラミングの経験があったとしても、勉強は避けられないよ。
確かにね。


えっと、例えばですけど、もともとプログラミングスキルが高くて、勉強せずに天狗になっている人とかはどうなんですか?
自分が今まで見てきた中だと、天狗になっている人は、プログラミングとは他のSEの業務で躓いている気がするね。プログラミングはあくまでもSEの仕事の一部だから、きっと、他のところで勉強しないとやっていけない。


他って何があるんですか?
SEはコミュニケーション力が必要
普段の業務を回すとか、管理とか、設計書を作るとか。


そうだな。あと、プログラミングが得意な人で陥りがちなのが、文章を書くのが苦手だとか、お客様と会話して要件を聞き出すのが苦手なこともあるな。
コミュニケーションに関連するところだね。プログラミングのスキルは必要だけど、SEはコミュニケーション力も大事だよな。


私も本当にそう思います。コミュニケーションで躓いているSEって結構いますね。
そうだね。プログラミングの知識がどこまで求められているか? という観点で言うとさ、プログラミングはメチャクチャ高いレベルを求められている訳ではないと思うんだよ。

プログラミング以外の仕事も結構あるから、プログラミングは一定水準まであれば良いと自分は考えているよ。


そうそう。プログラミングの知識はそこまで突き詰める必要はない。プログラミングに拒否反応を起こさないレベルがあればいいかな。
プログラミング以外に得意分野があれば、それはそれでプロジェクトから重宝されるよね。チームで開発しているからね。それに、プログラミング以外のスキルの幅が広いよね。


確かに。SEはスキルの幅が広いですね。

まとめると、プログラミングの経験があるか? ということにあまり心配しすぎるなという感じなんですかね。他にもコミュニケーションとか文章作成スキルとか幅広いスキルが求められる。特にコミュニケーションは大事ということでしょうか。

お、珍しく綺麗にまとめたな。
ちょっと! 自分の仕事取らないでよ!(笑)


キャラクター紹介

綿谷
7年目の男性。同期の佐藤とその後輩である綾香にランチを奢るという約束で、新卒向けの会社説明会でするスピーチの内容の相談に乗ってもらうことに。

佐藤
7年目の男性で理系出身SE。ロボット工学を専攻していたが「顔が見える顧客にシステムを作りたい」という想いを胸にSEになった。

綾香
3年目の女性で文系出身SE。いつも笑顔で元気いっぱいで、SEはイケイケな人が多いと思っている。